給料から引かれているお金、全部説明します。知っておくと、仕事を辞めても安心。

知らないと損する制度・お金の知識 公的制度の紹介

給料日だ。

明細を開く。さて、今月はいくら入ってくるんだろう。

——え、こんなに引かれてるの?

その感覚、私にもある。月給が25万円だとして、手取りは20万を切る。差額の5万円近くが、毎月どこかへ消えていく。最初は意味がわからなかった。調べてみても難しくてよくわからない。結局「まあそういうもんか」と諦めて、ずっとそのままにしていた。

でも、その「引かれているお金」が何のためにあるのかを知ったとき、少し気持ちが変わった。

仕事を辞めたら生きていけない、と思っている人に伝えたい。引かれているお金は、あなたを守るために積み立てられている。知っているかどうかで、使えるか使えないかが決まる制度が、日本にはたくさんある。

この記事では、給料から引かれているお金を全部説明する。そしてその先に、あなたが今より少しだけ安心できる話をしたい。

※本記事は制度の概要をわかりやすく紹介することを目的としています。金額・条件・手続き等の詳細は、各制度の公式窓口や専門家にご確認ください。制度は改正されることがあります。

毎月、給料から何が引かれているのか

給与明細を見ると、「控除」という欄がある。ここに書かれているのが、天引きされているお金だ。

主なものをざっくり並べると、こうなる。

項目 概要
健康保険料 病院代を安くするための保険
厚生年金保険料 老後・障害・遺族への保障
雇用保険料 失業したときの給付
介護保険料 40歳から天引き開始
所得税 国に納める税金
住民税 自治体に納める税金(2年目から)

月収25万円の人の場合、社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険)と所得税・住民税を合わせると、おおよそ4〜5万円程度が引かれるのが一般的だ。手取りは20〜21万円前後になる。ただしこれはあくまで目安で、扶養の有無や加入している保険組合によって変わる。

「こんなに引かれるなら、もっと手元に残してくれればいい」と思う気持ちはわかる。でも、引かれているお金がゼロになったとき、あなたが病気になっても、仕事を失っても、何の保障もない状態になる。そのトレードオフを知った上で読んでほしい。

引かれているお金、全部説明する

① 健康保険料──病院代が3割で済む理由

日本では、保険証を持っていれば医療費の自己負担が原則3割で済む。残りの7割は健康保険が払ってくれている。

会社員が加入するのは「健康保険(社会保険)」で、保険料は会社と折半だ。自分が払う分は、月収の約5〜6%程度(加入する保険組合によって異なる)。月収25万円なら、自己負担はおよそ1万2,000〜1万5,000円程度が目安だ。

健康保険には、医療費の補助以外にも重要な制度がある。

高額療養費制度という仕組みがある。医療費が高額になった月は、一定の上限額を超えた分が後から戻ってくる制度だ。年収約370〜770万円の人なら、月の自己負担上限はおよそ8万円程度になる。入院や手術で何十万円もかかった場合でも、この制度を使えば実際の負担をかなり抑えられる。

ただしこの制度は、申請しないと使えない。知らずに全額払ったままになっている人が今もいる。加入している保険組合か市区町村の窓口に確認してほしい。

考えるカエル

考えるカエル

健康保険証ってただ病院で出すものだと思っていた。高額療養費制度なんて、社会人になって数年間、存在すら知らなかった。知ってから「もっと早く知りたかった」と思った制度のひとつだ。

② 厚生年金保険料──老後だけじゃない、今を守る保険

厚生年金は「老後のための積み立て」というイメージが強いが、それだけじゃない。

厚生年金には大きく3つの機能がある。

  • 老齢年金:65歳から受け取れる、老後の生活費
  • 障害年金:病気やケガで障害が残ったときに受け取れる給付
  • 遺族年金:加入者が亡くなったとき、家族が受け取れる給付

保険料は月収の約9.15%(令和5年度)を自己負担する。会社が同額を負担してくれるので、実際の保険料率は18.3%だが、自分が払うのは半分だ。月収25万円なら、自己負担はおよそ2万2,875円程度が目安になる。

重要なのは、障害年金は「老後」の話ではないという点だ。今、精神疾患や難病などで働けなくなった場合にも、一定の条件を満たせば受給できる可能性がある。これも申請が必要な制度だ。

※障害年金の受給条件は複雑です。詳細はお住まいの年金事務所または社会保険労務士にご相談ください。

③ 雇用保険料──仕事を失ったときの命綱

雇用保険は、失業したときに給付を受けられる保険だ。

保険料は月収のおよそ0.6%(2024年度・一般の事業)で、月収25万円なら約1,500円程度。負担としては小さいが、使えるときの恩恵は大きい。

会社を辞めたあと、雇用保険に加入していた期間や退職理由によって「失業給付(基本手当)」を受け取れる。給付額はざっくり、直前の給与の50〜80%程度(賃金が低いほど給付率は高くなる)。受給できる期間は加入期間や退職理由によって異なり、90日〜最長360日まで幅がある。

「自己都合退職(自分から辞めた場合)」は、給付開始まで2ヶ月程度の待期期間がある。「会社都合退職(解雇・倒産など)」の場合はほぼ待期なしで給付が始まる。

これも申請しないともらえない。退職後はハローワークへ行って手続きをする必要がある。自分から動かなければ、誰も知らせてくれない。

※給付額・期間は加入期間・賃金・退職理由等によって異なります。詳細はハローワーク(公共職業安定所)にご確認ください。

考えるカエル

考えるカエル

退職したとき、雇用保険の給付があることは知っていたけれど、ハローワークに行くのが怖くて最初は後回しにした。でも行ってみたら手続きは思ったより難しくなかった。申請して初めて「払ってきた分、ちゃんと使えるんだ」と思えた。

④ 介護保険料──40歳から始まる積み立て

介護保険は、40歳になると自動的に天引きが始まる。保険料は月収のおよそ1.82%(協会けんぽの場合・2024年度)で、会社と折半だ。

現役世代のうちはほぼ恩恵を受けないが、将来自分や家族が介護が必要になったとき、介護サービスの費用を大幅に抑えられる。

⑤ 所得税──稼ぐほど税率が上がる仕組み

所得税は国に納める税金で、収入が多いほど税率が上がる「累進課税」だ。税率は5%〜45%の7段階になっている。

会社員の場合、毎月の給与から概算で源泉徴収されて、12月の年末調整で過不足を精算する仕組みだ。還付金が戻ってくる人も多い。

⑥ 住民税──翌年に請求される税金

住民税は都道府県と市区町村に納める税金で、前年の収入をもとに計算される。

ここで知っておいてほしいのが、退職後に住民税の請求が来るという点だ。

会社員のうちは毎月給与から天引きされるが、退職すると翌年6月ごろに「昨年の収入に対する住民税」が一括または4回払いで請求される。仕事を辞めた後、収入がない時期に税金の請求が来て驚く人が多い。

仕事を辞めることを考えているなら、この点は事前に知っておいてほしい。

考えるカエル

考えるカエル

退職して数ヶ月後に、住民税の請求書が届いた。当時収入がほぼない時期で、かなり焦った。これを知っていたら、もう少し余裕を持って辞めていたと思う。

仕事を辞めても、すぐに詰むわけじゃない

ここまで、給料から引かれているものを説明した。

次に言いたいのは、「払ってきた分は、使える権利がある」ということだ。

仕事を辞めることへの恐怖の多くは、「収入がなくなること」への不安だ。でも、辞めた後も使える制度がある。知らないと損をする。

雇用保険→失業給付

雇用保険に加入していた期間があれば、ハローワークで手続きをして失業給付を受けられる。次の仕事を探しながら、一定期間は給付を受けられる。「会社を辞めたら収入ゼロ」ではなく、一定期間は給付金で生活できる。まずこれを把握しておくだけで、退職へのハードルが少し下がるはずだ。

健康保険→任意継続か国民健康保険へ

退職すると会社の健康保険から外れる。その後の選択肢は主に2つだ。

  • 任意継続:退職後2年間、今の健康保険を継続できる。ただし会社負担分も自分で払うことになり、保険料は今の約2倍になる
  • 国民健康保険:市区町村の窓口で切り替える。保険料は前年の収入をもとに計算されるため、退職後に収入が減れば保険料も下がる

どちらがいいかは収入状況によって異なる。退職が決まったら早めに比較することをおすすめする。

※保険料の詳細はお住まいの市区町村または協会けんぽにご確認ください。

年金→国民年金への切り替え(免除制度あり)

退職後は、厚生年金から国民年金への切り替えが必要だ。国民年金の保険料は月額およそ1万7,000円程度(2024年度)。

収入がない・少ない時期には、保険料の免除・猶予制度がある。申請すれば、収入状況に応じて保険料の全額・半額・一部の免除を受けられる。免除を受けても、将来の年金が完全にゼロになるわけではない(受け取る額は減る)。

免除を受けずに払わないでいると、未納として扱われ、将来の年金に影響する。必ず申請することをおすすめする。

※免除・猶予の条件・申請方法は、お住まいの市区町村または年金事務所にご確認ください。

考えるカエル

考えるカエル

仕事を辞める前、「辞めたら終わりだ」と思っていた。でも実際に辞めてみて、使える制度がいくつもあることを知った。知らなかっただけで、知っていれば早く決断できたかもしれない。

知っていないと損をする制度がある

日本の制度の特徴は、申請しなければ使えないものが多いことだ。

存在を知らなければ申請できない。だから、制度を知っているかどうかで、受け取れるものが大きく変わる。

代表的なものをいくつか挙げておく。

高額療養費制度(前述):医療費が高額になったとき、上限を超えた分が戻ってくる。申請が必要。

傷病手当金:病気やケガで会社を休んだとき、健康保険から給与のおよそ2/3が最長1年6ヶ月支給される。メンタル疾患でも対象になる。休職を考えているなら知っておいてほしい制度だ。

生活保護:収入・資産が一定水準以下の場合、最後のセーフティネットとして利用できる。「働けないと受けられない」「持ち家があると受けられない」などの誤解が多いが、正確な条件はお住まいの福祉事務所に相談してほしい。

これらは全て、知らなければ使えない。でも知っていれば、いざというときの選択肢になる。

※各制度の詳細な条件・申請方法は制度ごとに異なります。正確な情報は各窓口にご確認ください。

日本の保障、他の国と比べるとどうなのか

「日本は社会保障が充実している」とよく聞く。実際のところはどうなのか。

正直に言うと、手放しで「充実している」とは言えない。北欧のスウェーデンやデンマークと比べると、社会支出のGDP比でかなり差がある。北欧では教育・医療・育児支援が手厚く、国民の満足度も高い。

ただし北欧の高福祉は、高い税負担と表裏一体だ。スウェーデンの国民負担率(税金+社会保険料の対所得比)は日本より10ポイント以上高い。医療は基本無料だが、緊急でなければ1ヶ月以上待つこともある。日本のように、すぐに病院にかかれる環境ではない場合もある。

アメリカはどうか。公的医療保険が限定的で、保険のない人は医療費が全額自己負担になる。入院すると数百万円の請求が来るケースも珍しくない。「保険がなければ病院に行けない」という現実がある。

日本は北欧ほど手厚くはないが、アメリカのような「保険なし即終わり」という状況とも違う。全国民が何らかの公的医療保険に加入でき、医療費が3割負担で済み、高額療養費制度もある。

「日本より海外の方がいい」と安易に考えるのは危険だ。日本で使えていた保障が、移住先では使えない可能性がある。特に保険・医療制度は国によって大きく異なる。制度の詳細を調べずに動くと、いざというときに無保護になりかねない。

考えるカエル

考えるカエル

「日本の社会保障はダメだ、北欧に移住したい」という気持ちはわかる。でも北欧の高福祉は高い税金とセットで、医療もすぐにかかれるわけじゃない。隣の芝生だけ見て動くのは怖い。

まとめ|引かれているお金は、未来のあなたへの積み立てだ

毎月給料から引かれているお金は、単なる「損」じゃない。

病気になったとき。仕事を失ったとき。体が動かなくなったとき。そういうときに使える権利として、あなたが積み立ててきたお金だ。

ただし、知らなければ使えない制度がたくさんある。

今すぐ全部覚えなくていい。ただ「こういう制度があること」を頭の片隅に置いておいてほしい。いざというとき、「あ、こういうときに使える制度があったはずだ」と思い出せるだけで、選択肢が全然違ってくる。

仕事を辞めることが怖い人に伝えたい。辞めたからといって、すぐに生きていけなくなるわけじゃない。使える制度を知っていれば、少しの間は踏ん張れる。

あなたが払ってきたお金は、あなたを守るためにある。

今、仕事のことや生活のことで行き詰まっているなら、相談窓口も見てみてください。一人で抱え込まなくていい。

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