退職代行に興味を持った時に読んでほしい

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退職代行のことを調べている。

でも、なんか後ろめたい。「こんなサービスを使うのは甘えじゃないか」「自分で言えよ」って、自分の中のどこかの声がする。

それでも調べている。それが今のあなただと思う。

この記事は、そういうあなたに向けて書いた。退職代行の仕組みでも、おすすめ業者ランキングでもない。「退職代行を調べているあなたは、今どういう状態にいるか」という話をする。そしてそこから、あなたに合った選択をするための話をする。

最後まで読んでほしい。

退職代行が気になっているあなたへ。まず、これだけ言わせてほしい。

あなたは無責任な人間じゃない。

退職代行を調べる人のことを「根性がない」「逃げている」と言う人がいる。でもそれは、まったく逆だ。

パーソル総合研究所が2025年に発表した「離職の変化と退職代行に関する定量調査」という調査がある。退職代行を利用した人たちの特性を、一般の離職者と比較した大規模な研究だ。その結論は、こうだった。

退職代行を利用した人は、一般の離職者よりチームワーク志向が強く、責任感が高かった。

「自分がいなくなると職場の業務が滞るのではないか」と心配している割合も、退職代行利用者の方が高かった。退職後に前職の関係者への「申し訳なさ」を感じ、自分を「裏切りもの」だと感じている人も、一般離職者より多かった。

研究者はその背景をこう分析している。退職代行利用者は、職場を「チーム」として意識し、チームの一員としての責任感が強い。しかし職場では孤立し、孤独を感じていた。相談できる相手が上司しかいない人が多く、その上司からハラスメントを受けていた。逃げ場を失った結果、退職代行に駆け込むという構図だ、と。

つまり、退職代行を使う人は「楽したい人」じゃない。「真面目すぎて、逃げ場がなくなった人」だ。

あなたが退職代行を調べているとしたら、それはあなたが無責任だからじゃない。真面目すぎるから、追い詰められたのかもしれない。

考えるカエル
退職代行を調べる人は「逃げる人」じゃなくて「逃げ場がなくなった人」だ。データがそう言っている。

退職代行に興味を持った時、あなたはこういう状態にいる

退職代行を調べている人の心理を、できる限り正確に言語化してみる。

「辞めたい」という気持ちはある。でも自分では動けない。言い出せない。あるいは言ったけど聞いてもらえなかった。あるいは言おうとするたびに体が拒否する。

「なんで自分はこんなに弱いんだろう」という自己嫌悪がある。でも同時に「これは自分が弱いんじゃなくて、あの職場がおかしいんじゃないか」という感覚もある。どちらが正しいのかわからないまま、夜中にスマホで退職代行を調べている。

これは、かなりしんどい状態だ。

パーソル総合研究所の調査で、退職代行を利用した理由のデータがある。

  • 「すぐにでも退職したかったから」:42.3%
  • 「上司への恐怖心があった」:28.8%
  • 「体調不良・精神的につらかったから」:25.0%
  • 「職場の人たちと関わりたくなかったから」:23.1%
  • 「申し出ても退職を認めてもらえなそうだった」:23.1%

「上司が怖い」「もう体が持たない」「あの人たちと一言も話したくない」。それくらい追い詰められた人たちが、退職代行を使っている。

さらに衝撃的なデータがある。同調査では、退職代行を使っていない、今普通に在職している正規雇用者に「職場で相談できる人がいるか」を聞いている。その結果、61.4%が「職場で相談できる人がいない」と回答した。

退職代行を使う人だけが孤独なのではない。働いている人の6割超が、職場で孤立している。その中で誰かに相談できず、限界を超えて、退職代行に辿り着く人がいる。それが実態だ。

あなたが今退職代行を調べているとしたら、それはあなたが特別に弱いからじゃない。追い詰められるだけの状況に置かれていたということだ。

なぜ、これほど退職代行が増えているのか

退職代行サービス「モームリ」の利用者数は、2022年の事業開始時に約1,100人だったのが2024年度には約2万人。2年で20倍だ。マイナビが2024年に発表した調査では、直近1年間に転職した人の16.6%が退職代行を利用した。20代に絞ると18.6%で、ほぼ5人に1人だ。

これだけ増えているのには理由がある。

一つは、追い詰められている人が増えているということだ。パーソル総合研究所の2025年調査では、離職者の不満の内容が6年前と比較して変化していることがわかった。「サービス残業が多い」「労働時間が長い」という不満は減少した。一方で「求められる成果が重すぎる」「上司の指示や考えに納得できない」「受けている評価に納得できない」という不満が上昇した。

働き方改革で残業は減った。でも今度は「成果」という名の見えないプレッシャーが増した。時間の問題から、関係性と評価の問題に移行した。後者の方が、逃げ場がない。長時間労働なら「早く帰れ」で解決の方向が見えるが、「上司との関係が壊れている」「評価が不当だ」「この場所に居場所がない」という問題は、そう簡単には解決しない。そういう状況で「辞めます」を言えない人が退職代行に流れる。構造的に当然の話だ。

もう一つの理由は、退職を告げること自体が戦いになる職場が増えているということだ。退職代行の利用理由の上位に「退職を引き留められた・引き留められそうだから」が40.7%(マイナビ調査)で入っている。4割の人は、引き止められることへの恐怖から退職代行を選んでいる。辞めたいと言ったら何が起きるかわからない、という職場が存在しているということだ。

みんな今何してるんだろ、と思う。辞めた後、ちゃんと生きてるといいんだけど。

退職代行を使うことは、悪ではない。ただ、善でもない。

正直に言う。

退職代行を使うことそのものは、悪いことじゃない。合法だし、労働者の権利の範囲内だ。退職代行を使って辞めた後に損害賠償を請求されるケースは極めて稀だし、転職先に退職代行の利用が知られるケースも限定的だ。

でも最高の退職のかたちは何かと聞かれれば、円満退職だと思っている。自分の口から「辞めます」と伝えて、引き継ぎをして、お世話になった人に挨拶して、終わる。

「社会人として当たり前だから」という話をしたいわけじゃない。

上司も、同僚も、社長も、同じ人間だからだ。

あなたがある日突然いなくなったとき、残った人たちの仕事が増える。あなたのことを心配する人もいる。「なぜ言ってくれなかったんだろう」と思う人もいる。それが全員嫌な人間だったとは限らない。中にはあなたのことをちゃんと気にかけていた人がいたかもしれない。

エン・ジャパンが退職代行を利用した人たちに「どのような環境があれば利用しなかったか」と聞いた調査がある。1位は「上司が話しやすい」(60%)、2位は「職場の人間関係がよい」(56%)、3位は「退職意向をきちんと認めてくれる風土がある」(42%)だった。

多くの人が本当は「話せる環境さえあれば自分で言いたかった」のだ。退職代行は、それができない状況を生み出した会社や職場の問題が需要を作り出している。使う人が悪いわけじゃない。使わないといけない状況を作った側に問題がある。

でも同時に、使わなくていい状況なら、使わない方がいいとも思っている。

退職代行についての世論。参考程度に見ておく。

世論なんて当てにならないが、一応紹介しておく。

否定派の言い分:
「引き継ぎもせずに辞めるのは無責任」「お世話になった人への礼儀がない」「自分の退職くらい自分で言え」「甘え」。特に40代以上に多い意見だ。

肯定派の言い分:
「逃げ場がない状況に追い込んだ会社に問題がある」「無断欠勤やバックレよりよほどマシ」「心が限界な人が使うのは当然」「もっと早く使えばよかった」。

どちらも一理ある。ただ否定派の意見には大事な前提がある。「退職を言い出せるだけのメンタルと環境がある」という前提だ。その前提が崩れている人には、その意見は届かない。崩れている状況を作ったのが会社側だとしたら、その意見はさらに的外れになる。

否定する人に言いたいのは、あなたが「自分で言えばいい」と言える状態にあるのは、それだけあなたの職場環境がまだ機能しているということかもしれないということだ。

私は退職代行に、肯定的だ。理由を正直に書く。

無理なものは無理な人がいるからだ。

言える人は、言えばいい。でも言えない人に「言え」と言っても、それは解決策じゃない。

私が肯定的な最大の理由は、使わないことで将来に影を落とす人がいるからだ。

「辞められない」という状況が長引けば長引くほど、心と体は消耗する。適応障害になることもある。うつ病に移行することもある。それが長期化すると、回復に何ヶ月も何年もかかる。一度壊れた心を元に戻すコストは、退職代行の費用(2〜3万円程度)とは比較にならない。

退職代行を使って1週間で終わる話が、使わなかったせいで半年引きずることになるケースがある。そのコストを天秤にかけたとき、退職代行を使う方がその人の人生にとってプラスになるケースは確実にある。

「無理な人が無理なまま耐え続けることの方が、よほど問題だ」と私は思っている。

ただし同時に、これも正直に言う。退職代行を安易に使うことを、全面的に勧めているわけでもない。

理由がある。これは転職リスクの話ではなく、あなた自身の話だ。

「言えなかった」という経験は、人によっては長く尾を引く。次の職場でも何か問題があったとき、「また言えないかもしれない」という不安が先に来ることがある。退職代行で物理的には解決できても、「自分はこういう状況で動けない人間だ」という自己像が残ることがある。

自分の口で言えたという経験は、次に生きる。その機会を手放すことのコストも、頭の片隅に置いておいてほしい。

考えるカエル
退職代行は問題を解決してくれる。でも「自分は言えない人間だ」という自己像までは変えてくれない。それを変えるのは、自分の言葉だけだ。

もし自分の口で言える可能性があるなら、これだけ読んでほしい

退職代行を肯定しながらこれを書くのは矛盾しているように見えるかもしれない。でも正直に書く。

もし自分で退職を告げられる可能性が少しでもあるなら、そちらを選んでほしい。

① 意外と「言える」ことがある

「言えない」と思っていた人が、実際に言ってみたらあっさり受理されたというケースは多い。引き止められるかもしれないという恐怖が先行しているだけで、蓋を開けてみたら「わかった、お疲れ様でした」で終わることも珍しくない。

上司も人間だ。あなたが退職の意思を固めていることをちゃんと伝えれば、多くの場合は受け入れる。「言ったら何をされるかわからない」という恐怖は、実際の出来事ではなく想像の産物であることも多い。

② 周りは思ったより気にしていない

「辞めると言ったら職場の雰囲気が最悪になる」と恐れている人は多い。でも実際には、退職を告げても意外と淡々と受け取られることが多い。みんな自分のことで手一杯だ。あなたの退職をドラマにするほど余裕のある職場は少ない。

私も若い頃に仕事を辞めたことがある。「次の日に行ったらどんな顔をすればいいんだ」と恐怖だった。でも職場の人たちは思ったより普通だった。一言「ご迷惑をおかけしました」と言えば、それでいつも通りの毎日が始まった。みんな自分のメールボックスを見て「うわ、溜まってる」と思っているだけだ。

③ 自分で決着をつけた経験が、次に残る

「言えなかった自分」ではなく「言えた自分」として次の職場に入れる。これは数字には出ない話だが、大事なことだと思っている。退職代行は現実的な問題を解決してくれる。でも「自分はこういう状況で動けない」という自己像までは変えてくれない。自分の言葉で伝えたという事実だけが、その自己像を変える。

④ 転職でのリスクを回避できる

東京商工リサーチが2026年4月に発表した調査(対象6,425社)では、採用選考において退職代行の利用歴が判明した場合、「採用に慎重になる」が49.3%、「採用しない」が26.0%だった。退職代行の利用歴が転職先にバレることは稀だ。ただ「万が一知られた場合のリスク」として認識しておくべき数字だ。自分で退職を伝えれば、このリスクはゼロになる。

それでも「無理だ」と思うなら、退職代行を使えばいい

自分で言えると思う人は、自分で言う。

それが難しい人は、退職代行を使う。

どちらが正解かという話じゃない。大切なのは、あなたに合った選択ができているかどうかだ。

逃げることが正解のときがある。戦わずに撤退することで、自分を守れる場合がある。追い詰められた状態で「自分で言わなきゃ」と頑張って、心が壊れてからでは遅い。

退職代行を使うとき、罪悪感を持つ必要はない。

あなたが逃げ場を失ったのは、あなたが弱いからじゃない。逃げ場がない構造を作ったのは、あなた以外の何かだ。その状況でどうにか出口を探して、退職代行というサービスを見つけた。それはむしろ、自分を守ろうとした行動だ。

ただ一つだけ言わせてほしい。

退職代行を使う前に、「休む」という選択肢を試したか?

退職代行を使いたいほど追い詰められているなら、まず休むことを検討してほしい。有給が残っているなら使う。傷病手当を使って休職する。そういう選択肢がある。辞めるという判断は、休んだ後でもできる。でも辞めてしまった後に「やっぱり休めばよかった」と思っても、戻る場所はない。

今の苦しさの中で下す決断は、冷静な状態で下す決断とは別物だ。まず今日を乗り越えること、そのために「休む」を選ぶことは、退職代行を使うことよりも先に来る選択肢だ。

順番は「今日を生き延びる→休む→判断する→必要なら退職代行を使う」だ。

考えるカエル
退職はいつでもできる。でも休んでからでも遅くない。今の苦しさの中で下す決断より、少し楽になってから下す決断の方が、あなたの本音に近いはずだ。

あなたの選択を、私は否定しない

退職代行を使っても、使わなくても、あなたの選択は間違っていない。

真面目で、責任感が強くて、それでも追い詰められてしまった。そういう人が退職代行を調べる。あなたが甘いわけでも、逃げているわけでもない。

ただ、できるなら人生の選択を「自分で選んだ」という実感とともにしてほしい。退職代行は手段だ。あなたの人生の決断は、あなた自身のものだ。

退職代行を使う前に一度、自分の気持ちに正直に問いかけてみてほしい。

「私は今どういう状態で、何を選びたいのか」と。

その答えが出たら、それがあなたの選択だ。どちらであっても、それでいい。

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