希望を持って入社した。
最初の数ヶ月は、仕事が楽しかった。新しいことを覚えるたびに成長している感覚があった。顧客に感謝されるたびに、やりがいを感じた。
でも、そのうち少しずつ、何かがずれていった。
1年間、明らかに周りより頑張っていたのに、給料が上がらなかった。涼しげな顔をしているだけの同僚が、自分より先に出世した。信頼関係を積み上げてきた顧客に、会社の都合で納得できないアプローチをしなければならなかった。
そのとき、ふと思った。
「あれ、なんで仕事してるんだっけ」
この記事は、その問いへの答えを持っていない私が書いている。今もキャリアブレイク中で、主夫をしながら1年が経った。それでもまだ、答えは出ていない。
でも、考えることをやめていない。そしてきっと、考え続けていれば、答えは見つかると思っている。
そういう記事だ。
なんのために働くのか、迷っているのはあなただけじゃない
「なんのために働いているのかわからない」と感じたことがある人は、どれくらいいるのだろうか。
転職サービスdodaが2024年に行った15,000人を対象とした調査では、「なんのために働くのか」という問いへの答えの1位は「お金のため」で84.4%だった。2位が「やりがい・生きがいのため」で18.8%、3位が「自分の成長のため」で18.1%と続く。
内閣府の調査でも「お金を得るために働く」が56.4%でトップだった。
一方、日本生産性本部の意識調査(2023年)では、3人に1人が「仕事に満足していない」という結果が出ている。
つまり、多くの人が「お金のために働いている」と答えながら、その仕事に満足できていない状態にある。
「お金のためだ」と割り切れているなら、そこまで迷わないはずだ。でも実際には、お金だけじゃ説明できない何かがあって、でもそれが何かわからなくて、結果「なんのために働いているのかわからない」という感覚になる。
この問いは、仕事がうまくいっていない人だけが感じるものじゃない。仕事がそれなりにうまくいっていても、ある日突然「なんでこれをやっているんだろう」という感覚が来ることがある。むしろ、真剣に仕事と向き合っている人ほど、この問いにぶつかりやすい。
これは珍しいことじゃない。あなただけが迷っているわけじゃない。
考えるカエル
「なんのために働くのか」と考え始めたとき、周りに同じことを考えている人がいなかった。みんな当たり前のように働いていた。自分だけ変なのかと思っていたけれど、データを見て少し安心した。
会社に希望を持っていた私が、問いを持つまで
最初から「仕事なんてどうせこんなもんだ」と思って働き始めた人は、おそらくあまりいない。
私もそうだった。入社したとき、少なくとも何かしらの希望を持っていた。成長したい、認められたい、稼ぎたい、誰かの役に立ちたい。そういう気持ちが、多かれ少なかれあった。
でも、どんな会社にも闇はある。
1年間、頑張っても給料が上がらなかった
明らかに自分の方が成果を出していると思っていた。数字も出していた。でも給料は変わらなかった。「頑張れば報われる」という信念が、静かに崩れていった。
給与が上がらないことそのものより、「頑張っても変わらない」という感覚が一番しんどかった。努力と結果が連動しない環境に居続けることが、じわじわと働く意欲を削っていった。
涼しげな顔をしている同僚が、先に出世した
努力と評価が連動しない現実を、目の前で見た。「何が正解なんだ」という感覚が生まれた。頑張る意味がわからなくなっていった。
その同僚が悪いわけじゃない。でも「この会社ではそういう人間が評価される」ということを知ったとき、自分がその会社で頑張り続ける理由が見えなくなった。
信頼してくれていた顧客を、会社の都合に巻き込まなければならなかった
時間をかけて築いてきた関係があった。その顧客が納得していない状態で、より大きな売り上げを取りに行くよう指示された。仕事のために人間関係を道具にする感覚が、どこかで何かを壊した。
「仕事とはそういうものだ」と割り切れる人もいると思う。でも私はそれができなかった。仕事の中で大切にしたいものと、会社が求めるものがずれていた。そのずれが、「なんで仕事してるんだっけ」という問いを生み出した。
こういうことが積み重なっていったとき、その問いが自然に浮かんできた。
答えを出そうとした。でも出なかった。そのままキャリアブレイクに入り、今に至る。
考えるカエル
入社したときの自分と、「なんで仕事してるんだっけ」と思ったときの自分を比べると、何かが削れていた。気力なのか、信念なのか、うまく言えないけれど、確かに何かが減っていた。
働く理由は、人によって違っていい
「なんのために働くか」に、正解はない。
でも、よく言われる答えにはいくつかのパターンがある。自分がどれに近いかを知るだけで、今の仕事が合わない理由が少し見えてくることがある。
お金のために働く
最も正直な答えだ。生活費を稼ぐために働く。それ以上でも以下でもない。
この答えを持っている人は、仕事に感情的なエネルギーをあまり使わない分、プライベートを充実させることに集中できる。仕事はあくまで手段だという割り切りができると、消耗しにくい。
ただし、「お金のため」だけだと、仕事がただの苦役になりやすい。それ自体は悪くないが、長く続けるにはそれ以外の何かが必要になることも多い。「お金のためだけど、それが達成できている環境か」を確認することが大切だ。
やりがいのために働く
仕事そのものに意味を見出している人だ。誰かの役に立つこと、自分のスキルを発揮すること、何かを成し遂げること。そこに働く意味を感じている。
やりがいを重視する人は、仕事への没入度が高い。成果が出たときの充実感が大きい分、成果が出ないときや評価されないときのダメージも大きくなりやすい。「やりがいはあるのに評価されない」という状況が最も消耗しやすい。
成長のために働く
自分が上手くなっていく実感が、働く動機になっている人だ。新しいスキルを身につけること、できなかったことができるようになること。その過程に価値を感じている。
成長を重視する人は、ルーティンワークに飽きやすい傾向がある。同じことを繰り返すだけの環境では、モチベーションを保つのが難しくなる。「この仕事で自分は成長しているか」を定期的に確認することが重要だ。
人間関係のために働く
職場の仲間が好きだから働いている、という人がいる。仕事の内容より、一緒に働く人との関係が働く理由になっている。
この動機を持つ人は、人間関係が崩れたときに一気に仕事が嫌になりやすい。逆に、いい人間関係がある環境では、多少つらい仕事でも続けられる。職場環境の選び方が、仕事の満足度に直結する。
社会とつながるために働く
働くことで社会の一員であるという感覚を得ている人だ。誰かに必要とされること、社会に参加しているという実感が、働く理由になっている。
キャリアブレイク中の私が時々感じるのが、この欠如感だ。「社会とつながっていない」という感覚は、思った以上にじわじわくる。仕事は収入だけでなく、社会との接点でもあったんだと気づく。
考えるカエル
どれが正しいとかではなく、自分がどれに近いかを知っているだけで「なぜ今の仕事が合わないのか」が少し見えてくることがある。答えじゃなくて、ヒントとして使ってほしい。
「なんのために働くか」がわかると、合う働き方が見えてくる
働く理由がある程度わかってくると、自分に合う働き方の輪郭が見えてくる。
「お金重視」なら、時給や年収が高い仕事・残業代が出る環境・副業で複数の収入源を持つ、という方向性が合いやすい。やりがいより条件で選ぶ方が、結果的に消耗しない。求人票を見るときも、給与の内訳(基本給と固定残業代の割合)を必ず確認する習慣をつけておくといい。
「やりがい重視」なら、自分の強みが活かせる職種・成果が見えやすい仕事・裁量が大きい環境が合いやすい。給与より仕事の中身で選ぶ方が、長続きする。面接では「どんな仕事ができるか」を必ず確認する。
「成長重視」なら、新しいことを学べる環境・ジョブローテーションがある会社・スキルアップの機会が多い職場が合いやすい。同じことの繰り返しが多い環境は向いていない。入社後に「成長できているか」を半年ごとに自分で振り返るといい。
「人間関係重視」なら、チームで動く仕事・職場の雰囲気を重視した会社選び・小規模でアットホームな環境が合いやすい。大企業の歯車になるような働き方は消耗しやすい。職場見学や社員との面談で雰囲気を直接確かめることが大切だ。
「社会とのつながり重視」なら、社会貢献度が高い仕事・人と関わる機会が多い職種・地域に根ざした仕事が合いやすい。在宅ワーク中心の環境では孤独感が強まりやすい。
もちろん、複数の動機が混ざっていていい。「お金もほしいし、やりがいも感じたい」でいい。その優先順位が明確になっていると、仕事を選ぶときの基準が作りやすくなる。
今の仕事が合わないと感じているなら、「自分の働く理由」と「今の環境」がミスマッチしているだけかもしれない。それは、あなたの能力の問題じゃない。
「なんのために働くか」の答えの見つけ方
答えが出ない人に向けて、具体的な問いかけをいくつか書いておく。
紙に書き出しながらやると、頭の中で考えるより輪郭が見えやすくなる。すぐに答えが出なくていい。問いを持ち続けることが大事だ。
問い① 仕事中に「これは楽しい」と思った瞬間はいつか
どんな仕事でも、まったく楽しくない瞬間しかなかったということは少ない。「あのとき少しだけ手応えがあった」「あの仕事だけは好きだった」という瞬間を思い出す。その瞬間に何があったかを掘り下げると、自分が何に動機づけられているかが見えてくる。
「顧客に直接感謝された瞬間」「自分のアイデアが採用された瞬間」「チームで目標を達成した瞬間」など、具体的な場面を思い出せると、より深いヒントが得られる。
問い② 仕事でいちばん消耗したのはどんな状況か
消耗するポイントを知ることで、自分が何を大切にしているかが逆説的にわかる。人間関係で消耗するなら、人間関係を重視している。評価されないことで消耗するなら、承認が重要な動機になっている。納得できないことを強制されると消耗するなら、自律性を強く求めている。
消耗のパターンを知っておくと、次に仕事を選ぶときの「避けるべき環境」が明確になる。
問い③ お金が十分にあっても、やりたいと思う仕事はあるか
「お金がなくてもやりたいことは何か」という問いはよく聞くが、これはハードルが高すぎる。「お金が十分あっても、それでもやりたいと思う仕事はあるか」に変えると、少し現実的に考えやすくなる。あるなら、そこに自分の動機の核がある。
すぐに答えが出なくていい。「今はない」という答えも、それはそれで一つの答えだ。
問い④ 5年後、どんな状態で働いていたいか
具体的な職種ではなく、「状態」を考える。自由な時間がある状態、誰かに頼られている状態、スキルを発揮している状態、チームで何かを達成している状態。その状態から逆算すると、今何をすべきかが見えてくることがある。
「5年後に今と同じ状態でいたいか」という問いに「ノー」と答えられるなら、何かを変える理由が明確になる。
考えるカエル
私が「消耗した仕事」を振り返ったとき、共通していたのは「自分が納得できていない状態で動かされること」だった。それがわかってから、自分が「自律性」をかなり重視している人間だということに気づいた。
私はまだ、答えが出ていない
正直に言う。
キャリアブレイク中で、主夫をしながら1年が経った。その間ずっと「なんのために働くのか」を考えてきた。でも、明確な答えはまだ出ていない。
「お金のため」だけじゃないことはわかっている。「やりがいが大事」という感覚もある。「自律的に動ける環境じゃないと消耗する」こともわかってきた。
でも、それが一本の答えにまとまっているかというと、そうじゃない。
それでもいいと思っている。
「なんのために働くか」という問いは、一度答えを出したら終わりじゃない。年齢が変わると、環境が変わると、答えも変わる。新卒のときの答えと、30代の答えが同じである必要はない。20代で「やりがいのために働く」と思っていた人が、40代では「家族のために安定して稼ぐことが大事」に変わることがある。それは成長であって、ブレじゃない。
大事なのは、答えを持っていることよりも、問い続けていることかもしれない。
問い続けている人は、自分の変化に気づける。環境とのミスマッチに気づける。「ここじゃない」と判断できる。「なんとなく合わない気がするけど、何が合わないのかわからない」という状態が一番消耗する。問いを持っていれば、その「なんとなく」の正体に近づける。
答えがない状態に耐えながら、それでも考えることをやめない。きっと、その先に答えは来る。そういう気がしている。根拠はないけれど、そういう気がしている。
考えるカエル
「答えが出ていない」ことを、この記事に書くか迷った。でも書くことにした。答えが出ていない人が、「答えが出ていなくていい」と思えるための記事にしたかったから。
まとめ|答えより、問い続けることの方が大事かもしれない
「なんのために働くか」に、正解はない。
15,000人に聞いた調査でも、1位の「お金のため」が84.4%で、それ以外の理由は大きく分散した。それだけ、人によって答えが違うということだ。
自分がどんな理由で働きたいのか。どんな状態で働いていたいのか。何があると消耗して、何があると充実するのか。
その問いを持ち続けることが、自分に合った働き方を見つけるための、唯一の道だと思っている。
今の仕事が合わないと感じているなら、それはあなたが弱いからじゃない。「自分の働く理由」と「今の環境」がずれているだけかもしれない。そのずれに気づけているだけで、すでに一歩先にいる。
答えはすぐに出なくていい。
今日も、考え続けていればいい。
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今、仕事のことで行き詰まって誰かに話を聞いてほしいなら、相談窓口も見てみてください。一人で抱え込まなくていい。
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