何度転職してもいい。未経験転職を6回繰り返して得たもの、失ったもの。

仕事がつらいと感じているあなたへ 仕事がつらい

何度転職してもいい。未経験転職を6回繰り返して得たもの、失ったもの。

転職を繰り返している人に、世間はどんな言葉を向けるか。

「すぐ辞めるんだろうな」「忍耐力がない」「また転職したの?」

その視線を浴びながら、それでも転職し続けた人間が書いている。私は20代で6社以上の転職を経験した。営業、農業、アパレル。業種をまたぎながら、未経験で飛び込み続けた。

今この記事を読んでいるあなたは、おそらくこういう状況にあるんじゃないか。

今の仕事が続かない。また辞めたくなっている。でも「また辞めたら次はどうなる」という不安が先に立って、動けないでいる。あるいはすでに何度か転職していて、自分を責めている。

先に言っておく。

転職を繰り返すことは、悪いことではない。ただし、現実を知らずに繰り返すのと、現実を知ったうえで選び取るのでは、全然違う。

この記事では、私が6回以上未経験転職を経験して「得たもの」と「失ったもの」を、正直に書く。データも使いながら。

読み終わったとき、あなたが今の自分の状況を少しだけ広い視野で見られるようになっていればいい。


転職は、もはや特別なことではない

まず、数字を見てほしい。

マイナビの調査によれば、2024年の正社員転職率は7.2%。コロナ前の2019年より高い水準が続いている。20代男性に絞れば、その数字は13.4%にまで上がる(マイナビ転職動向調査2025年版)。

厚生労働省の雇用動向調査(2024年)では、転職入職者数は492万人。就業者全体の5人に1人近くが、毎年転職を経験している計算になる。

つまり転職は、もはやレアな行動ではない。

だとすれば、「何度も転職する人間は問題がある」という見方は、実態とズレが生じている。とはいえ、転職回数が多くなると採用市場で不利になるのも事実だ。その現実から目をそらすのも、この記事の目的ではない。

大事なのは、転職を「繰り返した結果何が残るか」をちゃんと見ること。そのうえで、自分の選択を自分で決めることだ。


私が6回以上の未経験転職を経験した話

少し、私自身の話をさせてほしい。

1社目は営業だった。新規開拓営業で、毎日アポを取り続ける仕事。数字を積み上げることには向いていたが、会社の体質が合わず、気づいたら辞めていた。

2社目以降も、業種はバラバラだった。農業に関わる仕事、アパレルの現場、また営業。転職のたびに「未経験」のスタートラインに立ち、また一から覚えた。

転職を決めるたびに、怖かった。「また転職する自分はおかしいのか」という感覚は、4社目くらいまで続いた。

ところが、5社目を過ぎたあたりから、何かが変わった。

履歴書を開いたとき、「こんなやついないだろ」と思えるようになっていた。マイナスではなく、プラスとして。これだけ違う環境を生き延びてきた人間が、ここに一人いる。そういう感覚だった。

その変化がどこから来たのか、順番に説明していく。


未経験転職を繰り返して「得たもの」

① コミュニケーションの引き出しが増えた

農業の現場で働く人と、アパレルの接客スタッフと、企業の法人営業先と話す言葉は、まったく違う。

農業の現場では、成果と体力が信頼の基準だった。無駄な話は好まれない。アパレルでは、感覚や空気を共有する言葉が必要だった。法人営業では、数字と論理がものを言った。

違う業界に飛び込むたびに、その場の「言語」を学んだ。これは研修で習えるものではない。実際にその場所に立って、失敗しながら体に染み込んでいくものだ。

こうした「どこでも通じるスキル」は、転職市場ではポータブルスキルと呼ばれる。業種や職種が変わっても持ち運びできる能力のことで、経済産業省が提唱する「人生100年時代の社会人基礎力」でも重要視されている。複数の業界を経験することは、このポータブルスキルを鍛える最短ルートの一つだ。

② 業界の裏側が見えた

服がどうやって世に出るのか。

アパレルで働いてみて初めて、そのプロセスが見えた。デザインが生まれ、素材が選ばれ、生産工場との交渉があり、店頭に並ぶまでに何十人もの手が入っている。消費者として服を買うだけでは絶対に気づかなかったことだ。

農業も同じだった。食材が食卓に届くまでの労働と、生産者が抱えるリスクは、スーパーの棚を眺めているだけでは想像できない。

それぞれの業界に実際に入ることで、「会社がどのように利益を上げているか」の解像度が上がった。これは見えない形で、仕事の判断力につながっている。

③ 人のつながりが広がった

私が関わった営業職は、比較的制限の少ない環境だった。多様な人と接点を持てる仕事だったため、様々なつながりができた。

プライベートでも役立つ場面は多かった。業者と直接知り合いになったことで、ちょっとした融通が利いたり、困ったときに声をかけられる人が増えたり。人脈というほど大げさなものではないが、「知り合いがいる場所が増える」という感覚は確かにある。

④ タイピングが死ぬほど速くなった

これは笑い話に聞こえるかもしれないが、本当の話だ。

ある職場は、仕事の波が激しかった。暇な時間が長い日があった。その時間に、私はひたすらタイピング練習をした。毎日、何時間も。

今、私のタイピングは相当速い。ブログを書く速度も、文章を打ち込む速度も、周囲より明らかに速い。これはあの時間があったからだ。

どんな環境にも、「持ち帰れるもの」は必ずある。それに気づけるかどうかが、転職を生かせるかどうかの分かれ目だと思っている。

⑤ 履歴書が「武器」に変わった

転職初期、履歴書は「言い訳をするための紙」だった。「なぜ辞めたか」を説明するための場所。書くたびに憂鬱だった。

それが5社目を過ぎたころ、見え方が変わった。

営業、農業、アパレル。これだけ違う現場を渡り歩いた人間は、そうそういない。マイナスのレッテルとして受け取る会社もある。でも、こういう人間を面白いと思う会社も確実にある。

「どこでも生きていける人間」の証明書として、履歴書は機能し始めた。

⑥ 「未経験で飛び込む怖さ」が消えた

転職をしない人は、ずっと怖いままだ。

転職を一度でも経験した人は、「なんとかなった」という記憶を持つ。二度経験すれば、「また始めたら覚えられた」という記憶が積み上がる。

6回経験すると、未経験の環境に飛び込むことへの恐怖が、ほぼなくなっていた。

「どうせ最初はゼロだ。ゼロから覚えればいいだけだ」

その感覚は、仕事以外の場面でも生きている。新しいことを始めるハードルが、明らかに下がっている。

⑦ 自分に合う「生き方の選択肢」が見えてきた

これが一番大きいかもしれない。

転職を繰り返すことで、「どんな環境なら自分は力を発揮できるか」が少しずつわかってきた。管理されるより自律的に動ける環境。チームワークより個人で動く仕事。数字を追うより、人と関わることに価値を感じる仕事。

それだけじゃない。

仕事という枠の外にも、選択肢があることを知った。家事を中心に生活する選択肢。業務委託や内職で収入を得る選択肢。生活コストを下げて、マイペースに暮らす選択肢。今の私が主夫という立場で生活しているのも、転職を繰り返す中で「働き方の固定観念」が外れていったからだと思っている。

一つの職場に長くいると、その「常識」が世界のすべてに見えてくる。転職を繰り返すことで、その視野が強制的に広がる。固定観念が崩れる。同調圧力がどれだけ無意味なことかが、体でわかってくる。

それは、自分の人生の解像度が上がるということだ。


正直に言う。失ったものもある。

ここまで書いてきたことは、全部本当のことだ。でも、きれいごとだけ言うつもりはない。

転職を繰り返すことには、確実にデメリットがある。

① 収入が上がりにくい

これが最もリアルな問題だ。

厚生労働省の雇用動向調査によれば、転職によって賃金が「増加」した人は約35%、「減少」した人も約34%と、ほぼ拮抗している。転職が必ずしも年収アップにつながらないのは、データが示す通りだ。

未経験転職を繰り返す場合、特に毎回スタート給与がリセットされやすい。同じ会社で3年かけてスキルを積み上げた人と、3年で3社を経験した人では、多くの会社で前者が高く評価される。

家族を養う必要がある場合、住宅ローンを組みたい場合、転職を繰り返していると審査が厳しくなるケースもある。これは現実として知っておいた方がいい。

② 専門性が薄くなる

浅く広いキャリアは、「何でもある程度できる」というプラスの側面がある。同時に、「これが突出して強い」という専門性を作りにくい。

特定の業種や職種で深く経験を積んだ人に比べると、専門職への応募は難しくなる。業界経験が問われるポジションでは、選択肢が狭まることがある。

③ 転職回数が採用基準に引っかかる場合がある

リクルートの調査では、採用担当者が転職回数を気にし始めるのは「3回以上」から増えるというデータがある。大企業では、転職回数が書類選考の足切り基準になっている会社もある。

つまり、転職を繰り返すことで「入れる会社」と「入れない会社」の差が出てくる。これは避けられない現実だ。


「同じ場所に居続けること」にも、リスクがある

ここまで転職繰り返すことのデメリットを書いてきた。でもここで、あまり語られない話をしたい。

同じ場所に居続けることにも、リスクがある。

内閣官房の資料(2024年)によれば、日本の労働者のうち勤続5年以上の割合は63.5%。OECD平均(54.0%)より明らかに高い。つまり日本は、世界でも珍しいほど「同じ会社に留まり続ける」国だ。

これは一見、安定に見える。だが、そこには盲点がある。

同じ会社で長く働くほど、「社内でしか通じないスキル」が積み上がっていく。その会社の慣習、その業界の常識、その上司が好む仕事の進め方。それは社内では評価されるが、外の世界では通用しない場合がある。

転職エージェント各社が共通して指摘しているのは、「社内価値と市場価値は別物」という点だ。いくら有名企業で役職についていても、社外でも通用するスキルがなければ、市場価値は低い。年功序列の評価体制に甘んじ、スキルや経験を積んでいない場合、転職に踏み出した途端に手詰まりになる。

広告や転職情報サービスは、「今すぐ転職を」と煽る。逆に「石の上にも三年」という圧力もある。どちらも外側からのノイズだ。

大事なのは、今いる場所が「自分を成長させているか」を、自分の目で確認し続けることだ。それができているなら、留まる選択もある。できていないなら、動く選択もある。どちらが正解かは、その人の状況によって違う。

広告が勧めるから転職する。周囲が残っているから残る。そういう選択ではなく、自分の足で、自分に合う環境を選びにいく。それがこの記事で一番伝えたいことだ。


それでも私は後悔していない。その理由。

デメリットを書いたうえで、はっきり言う。

私は今、自分の選択に後悔していない。

収入は同年代の平均より高くはないかもしれない。特定の業種での専門性は薄い。大手企業に書類で弾かれることもあるだろう。

でも、私は今、自分が選んだ生き方をしている。

転職を繰り返さなければ、「会社員として長く勤める」以外の選択肢が見えなかったかもしれない。農業の現場を知らなければ、食べることの意味が変わらなかったかもしれない。アパレルを経験しなければ、ものが作られる価値に気づかなかった。

そしてなにより。

転職を繰り返したことで、「自分は一つの場所だけに縛られていなくていい」という感覚が身についた。これが今の生き方の土台になっている。

何度も「また転職か」と自分を責めた。怖くて動けない時期もあった。でも一度踏み出すたびに、世界が少しずつ広がった。


まとめ:転職を繰り返すことは「戦略」にもなる

転職を繰り返す人に向けて書かれた記事の多くは、こう言う。「なぜ続かないのか自己分析しろ」「転職回数を増やすな」「専門性を磨け」。

それが正しい場合もある。

でも、違う角度の話もある。

転職を繰り返すことで広がる視野がある。身につくスキルがある。見えてくる選択肢がある。そして、「どこでも始められる」という感覚は、一度の転職では手に入らない。

大事なのは「繰り返すこと自体」ではなく、「繰り返す中で何を持ち帰るか」だ。

転職ごとに何かを学んでいるか。自分に合う環境を少しずつ絞り込んでいるか。失敗を次に活かしているか。

それができているなら、転職回数は武器になる。

そして最後に、もう一つ。

転職エージェントに誘導されているわけでも、「楽に稼げる」という広告に流されているわけでもない、自分で考えた選択かどうかを確認してほしい。情報が多い時代は、誰かの都合のいい方向に動かされやすい。

転職も、現状維持も、どちらも「自分の足で選ぶ」ものだ。その選択をするための情報として、この記事が少しでも役に立てばいい。

あなたが今、何度目かの転職を考えているとしたら、それはおかしいことじゃない。ただ、今度の転職で何を持ち帰るかを、少しだけ意識してみてほしい。

それだけで、この一手は違う意味を持つようになる。


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