会社に入ってしばらくたったころ、職場にコーラが無料で飲める冷蔵庫があることに気づいた。お菓子も食べ放題だった。
それをフル活用した。毎日飲んで、毎日食べた。それが私の「福利厚生の活用」だった。
でも今思うと、それだけだった。
会社の規程集に書いてあるはずの制度を、まともに読んだことがなかった。健康診断は受けていたけど、それ以外に何があるかを知らないまま、何年も働いていた。
この記事を読んでいるあなたも、もしかしたら同じかもしれない。「なんとなく知っている」状態で、実は使えていない制度が山ほどある、という状態に。
知らないまま使わないのは、純粋に損だ。この記事では、福利厚生の基本から代表的な制度の内容、そして明日から使えるようにするための具体的な行動まで、まとめて解説する。
そもそも福利厚生とは何か
福利厚生とは、給与や賞与とは別に、会社が従業員とその家族に提供する制度やサービスのことだ。目的は生活の安定・健康維持・働きやすさの向上にある。
給料が上がらなくても、福利厚生が充実している職場は実質的な待遇が高いとも言える。逆に、給料が高くても福利厚生がない職場は、見えないコストを自分で負担していることになる。
福利厚生は大きく2種類に分かれる。
法定福利厚生:法律で義務付けられているもの
どの会社でも必ず提供されなければならない制度だ。主なものは以下の6つだ。
健康保険:病気やケガのときの医療費負担を軽減する。自己負担が3割になるのはこの制度のおかげだ。保険料は会社と折半で負担される。高額療養費制度など申請が必要な制度が紐づいていることも覚えておいてほしい。
厚生年金保険:老後・障害・遺族への保障。保険料は会社と折半で負担される。障害年金は老後だけでなく、今働けなくなった場合にも使える制度だ。
雇用保険:失業したときの給付(失業給付)や、育児・介護休業給付などに使われる。会社を辞めたときに使える給付金のほとんどは、この保険から支払われる。
労災保険:仕事中・通勤中のケガや病気に対して給付される。保険料は全額会社負担だ。精神障害(うつ病など)も一定の条件を満たせば労災認定される。
介護保険:40歳から天引きが始まる。将来の介護サービス利用に備える制度だ。自分が使うのは遠い先でも、親が使う場面が来ることもある。
子ども・子育て拠出金:育児支援のための制度。全額会社負担。
これらは給料から天引きされているものも多く、すでに使っている制度だ。給与明細の「控除」欄に並んでいるのが、これらだ。
法定外福利厚生:会社が独自に設けるもの
法律で義務付けられていないが、会社が独自に提供している制度だ。内容は会社によって大きく異なる。ここが「知るかどうかで差がつく」領域だ。
経団連の調査によると、2019年度の企業が従業員1人あたりにかける法定外福利厚生費は月平均24,125円だった。つまり、あなたの会社も毎月あなたのために何らかの費用をかけているはずだ。それを使っているかどうかは、別の話になる。
考えるカエル
コーラとお菓子だけが福利厚生だと思っていた。会社が毎月私のために数万円の費用をかけていたと後から知って、純粋にもったいなかったと思った。
法定外福利厚生の種類を詳しく見ていこう
住宅・生活支援
住宅手当・家賃補助:毎月の家賃の一部を会社が負担してくれる制度。金額は会社によって異なるが、数千円から数万円の補助が出るケースも多い。特に一人暮らしをしている人にとっては、実質的な給与アップと同じ効果がある。上限額が設定されていることが多いので、就業規則で確認しておこう。
社宅・独身寮:会社が所有・契約する物件に安く住める制度。家賃が市場価格より大幅に安いことが多く、金銭的なメリットが大きい。入居条件(独身・勤続年数など)があることも多いので確認が必要だ。
引越し支援:転勤や就職に伴う引越し費用を会社が負担してくれる制度。引越し業者の費用に加えて、新居の敷金・礼金を補助してくれるケースもある。転勤が多い会社ほど整備されていることが多い制度だ。転居が決まったら、申請できるか必ず確認しよう。
通勤手当:電車・バス・車での通勤費用を会社が負担する。多くの会社で導入されており、支給上限額が設定されているケースが多い。転居などで通勤経路が変わったときは忘れずに申請しよう。
健康・医療支援
健康診断の充実:法定の健康診断に加えて、人間ドックや追加の検査項目を補助してくれる会社も多い。「受けていいですか?」と総務に確認するだけで使える制度だ。年に一度の機会なので積極的に活用してほしい。
スポーツジム・フィットネス補助:提携しているジムを割引価格で利用できる制度。月額数千円の補助が出るケースもある。福利厚生のポータルサイトに登録されていることが多いので、ログインして確認してみるといい。
メンタルヘルスケア:カウンセリングや専門家への相談費用を補助する制度。完全匿名で利用できるケースがほとんどだ。心と体の疲れを感じたとき、選択肢として知っておくだけで少し気持ちが楽になる。
休暇制度
慶弔休暇:結婚・出産・身内の葬儀などの際に取得できる特別休暇。法律で義務付けられていないが、多くの会社で導入されている。日数は会社によって異なるので就業規則で確認しておきたい。
リフレッシュ休暇:長期勤続した従業員が取得できる連続休暇。5年・10年の節目で数日〜1週間程度の休暇が取得できるケースが多い。「そんな制度があったのか」と後から気づいて時効になっているケースもあるので早めに確認しておこう。
アニバーサリー休暇:誕生日や結婚記念日などに取得できる休暇。導入している会社は多くはないが、あれば積極的に使いたい制度だ。
食事・レジャー支援
社員食堂・食事補助:安い価格で食事ができる社員食堂や、食事代の一部を会社が負担する制度。コンビニや飲食店で使えるチケットが配布されるケースもある。毎日使えば、年間で数万円の節約になることもある。
社員割引(社割):自社の商品やサービスを従業員が割引価格で購入・利用できる制度。小売業・飲食業・旅行業・エンタメ業など、自社に商品・サービスがある会社で導入されていることが多い。割引率は会社によって異なるが、30〜50%オフになるケースもある。意外と忘れがちな制度なので、入社時に確認しておこう。
レジャー施設割引:提携している施設(ホテル・テーマパーク・スポーツ施設など)を割引価格で利用できる制度。使い方を知らないと存在すら気づかないことが多い。後述する福利厚生代行サービスに登録している会社では、ポータルサイトから割引チケットを購入できることが多い。
資産形成・財務支援
従業員持ち株制度:毎月の給与から一定額を積み立て、自社株を購入できる制度だ。多くの場合、会社が積立額に対して一定割合の奨励金を上乗せしてくれる(5〜10%が一般的)。長期的に見ると、この奨励金分だけでも大きなメリットになる。ただし自社株への集中投資になるため、会社の業績によってはリスクもある点は覚えておきたい。
財形貯蓄制度:給与から天引きして会社経由で積み立てる貯蓄制度。一般財形・財形年金・財形住宅の3種類があり、財形年金と財形住宅は一定の条件を満たすと利子が非課税になる。自動で積み立てられるため、貯蓄が苦手な人にも向いている。
企業型確定拠出年金(DC):会社が毎月一定額を拠出し、従業員自身が運用方法を選ぶ年金制度。運用益が非課税になるため、長期的に見ると大きなメリットがある。加入条件を満たしているなら、放置せず運用先を選んでおこう。
自己啓発・キャリア支援
資格取得補助:業務に関連する資格の受験費用や教材費を会社が負担してくれる制度。申請が必要なことがほとんどで、知らないと損をする。資格を取ろうと考えているなら、申請できるかを先に確認しよう。
書籍購入補助:仕事に役立つ本の購入費を補助してくれる制度。月に数千円の補助が出る会社もある。
研修・セミナー参加補助:自己啓発のための研修やセミナーの費用を会社が負担する制度。「参加したいのですが補助はありますか?」と聞くだけで使える場合が多い。
考えるカエル
持ち株制度は奨励金が上乗せされると知ってから加入した。毎月少額でも、奨励金分だけで実質利回りが出る。知らないまま加入していなかったのがもったいなかった。
会社が「福利厚生代行サービス」を使っているケース
自社で福利厚生を整備するコストや手間を省くために、専門の代行サービスを使っている会社も多い。代表的なのが以下の2社だ。
リロクラブ(福利厚生倶楽部)
1993年にサービスを開始した、業界で最も歴史が長い福利厚生代行サービスだ。導入企業数は業界No.1で、25,800社以上が加入している。宿泊・レジャー・グルメ・育児・介護・自己啓発など350万種以上のサービスが利用できる。全国50エリアに対応しており、地域によってサービスに差が出にくい点が特徴だ。
あなたの会社が「福利厚生倶楽部」に加入していれば、専用のポータルサイトからホテルやレジャー施設の割引を受けたり、スポーツジムを安く使ったりできる。ログインしたことがない人は、一度確認してみてほしい。
ベネフィット・ワン(ベネフィット・ステーション)
リロクラブと並んで業界トップクラスのシェアを持つ福利厚生代行サービスだ。140万件以上のメニューが特徴で、ホテル・飲食・フィットネス・育児・介護など私生活全般に関わるサービスが充実している。Netflixが見放題になるプランや、給与から直接決済できる「給トク払い」など独自のサービスもある。
会員数はかつて1,594万人を超えており、2024年に第一生命ホールディングスの完全子会社となった。
代行サービスに登録されていたら、まずログインしてみよう
自社がリロクラブやベネフィット・ワンなどの代行サービスを使っているなら、IDとパスワードが発行されているはずだ。入社時に案内があったかもしれないが、忘れている人も多い。
総務・人事に「福利厚生のポータルサイトはありますか?」と聞けば、ログイン方法を教えてもらえる。一度ログインしてみると、思いがけない割引やサービスが見つかることがある。
考えるカエル
福利厚生のポータルサイトに登録してから、旅行やジムを安く使えることに気づいた。存在は知っていたのに、ログインしていなかっただけだった。
知らないまま使っていない人が多い、という現実
クーポン型福利厚生の利用実態調査(株式会社HQ、2025年)では、正規従業員の約90%が「月に1度も利用しない」と回答しており、約31%は「過去に1度も利用したことがない」と答えている。
使われない主な理由は3つだ。存在を知らない。手続きが面倒。使っていいのか心理的なハードルがある。
でも、はっきり言う。福利厚生は給与と同じく、あなたの労働条件の一部だ。健康診断の追加オプションを使う、ジムの補助を申請する、持ち株制度に加入する、引越し支援を申請する。これらは申請さえすれば受け取れる会社のお金だ。知らないまま見逃しているのは、実質的に給与の一部を受け取らずにいるのと同じだ。
使うことに罪悪感はいらない。使わないことで損をしているのは、あなただけだ。
今日からできること:まず自社の福利厚生を確認する
難しいことは何もない。まず、自社の福利厚生が何かを確認するだけでいい。
就業規則・福利厚生規程を確認する:入社時にもらった書類の中に含まれていることが多い。紛失した場合は総務や人事に問い合わせれば再度確認できる。
社内イントラネット・社内ポータルを確認する:多くの会社は社内の情報サイトに福利厚生の一覧を掲載している。ログインして「福利厚生」「制度」などで検索してみよう。
福利厚生代行サービスのポータルにログインする:会社がリロクラブやベネフィット・ワンなどを使っている場合、IDとパスワードが発行されているはずだ。ログインしたことがなければ、総務・人事に問い合わせよう。
総務・人事に直接聞く:「どんな福利厚生が使えますか?」と聞くだけでいい。聞くことは何も恥ずかしくない。
確認したら、使えそうなものを一つ選んで、来週中に申請してみる。それだけでいい。
まとめ|福利厚生は、あなたのためにある
福利厚生は、給与以外の形でもらえる会社からの報酬だ。知らないまま使わないのは、純粋に損をしている。
今日からできることをまとめる。
- 自社の福利厚生一覧を確認する(就業規則・社内ポータル・総務に問い合わせ)
- 福利厚生代行サービスのポータルにログインしてみる
- 使えそうなものを一つ選んで来週中に申請する
使うことに罪悪感はいらない。申請が必要な制度は、申請しなければもらえない。知っているかどうかだけで、受け取れるものが大きく変わる。
明日、まず自社の福利厚生を調べてみてほしい。コーラとお菓子以外にも、きっと使えるものが眠っているはずだ。
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給料から引かれているお金の仕組みについては、こちらの記事でも詳しく書いている。
→ 給料から引かれているお金、全部説明します。
仕事や生活のことで行き詰まっているなら、相談窓口も見てみてください。一人で抱え込まなくていい。



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