退職したらやること。手続きを全部まとめた。

知らないと損する制度・お金の知識 公的制度の紹介

仕事を辞めた。

清々したかもしれない。ほっとしたかもしれない。体が軽くなった人もいれば、まだ何も実感がない人もいると思う。

でも残念ながら、辞めた後にもやることがある。期限のある手続きが複数あって、知らずに放置すると金銭的な損をしたり、無保険期間が生まれたりする。誰かが親切に教えてくれるわけじゃないから、自分で動くしかない。

この記事は、退職後に何をすればいいかわからない人のために書いた。必要な手続きをすべて、順番に整理する。

一つだけ先に言っておく。もうあの会社との関係は終わった。残っているのは書類のやりとりだけだ。面倒でも、これを終わらせれば本当に次に進める。淡々とこなそう。


まず全体像を把握する。退職後にやることの一覧

退職後の手続きは大きく「会社とのやりとり」と「公的機関での手続き」の2種類に分かれる。転職先がすぐに決まっているかどうかによって、必要な手続きが変わる。

まず全体像を確認してほしい。

【会社とのやりとり】

  • 離職票を受け取る(失業保険の申請に必要)
  • 源泉徴収票を受け取る(確定申告・転職先の年末調整に必要)
  • 雇用保険被保険者証を受け取る(次の職場での手続きに必要)
  • 会社の備品を返却する

【公的機関での手続き】転職先が決まっていない場合

  • 健康保険の切り替え(退職翌日から14日以内)
  • 年金の切り替え(退職翌日から14日以内)
  • 失業保険の申請(ハローワーク)
  • 住民税の支払い
  • 確定申告(翌年2〜3月)

期限があるものから先に動くのが基本だ。特に健康保険と年金の切り替えは退職翌日から14日以内という期限があり、遅れると無保険期間が生まれたり保険料が遡って請求されたりする。後で詳しく説明する。


会社から受け取るもの① 離職票は必ずもらっておく

離職票とは何か

離職票は、会社を辞めたことを証明する書類だ(正式名称:雇用保険被保険者離職票)。1と2の2種類ある。主に失業保険(雇用保険の基本手当)の申請に使う。

転職先が決まっていても受け取るべき理由

次の仕事がすでに決まっていれば失業保険は使わない。だから「離職票は不要」と思って受け取らない人がいる。でもこれは後悔するパターンの一つだ。

転職先がすぐに合わなかった場合、早期退職した場合、前職の離職票と通算して失業保険を申請できることがある。退職日の翌日から1年以内であれば使える可能性がある。手元に置いておくだけでいい。

退職前に人事担当者に「離職票をください」と伝えておくこと。離職票は、退職者が希望した場合にのみ発行される書類だ(原則59歳未満の場合)。自動的に送られてくるわけではない。伝え忘れると発行されない可能性がある。

届くまでの期間と流れ

退職後、一般的に10日〜2週間程度で自宅に郵送される(会社によって異なる)。

流れはこうだ。まず退職日の翌々日から10日以内に、会社がハローワークへ必要書類を提出する義務がある(雇用保険法)。その後ハローワークが離職票を発行し、会社から退職者の自宅へ郵送される。

2週間過ぎても届かない場合の対処法

STEP1 会社に確認する。「離職票の発行手続きの状況を確認させてください」と連絡する。担当者の手続き漏れや遅延が原因のことが多い。

STEP2 会社に連絡しにくい場合はハローワークへ。会社の住所を管轄するハローワークに問い合わせると、発行状況を確認してくれる。場合によってはハローワークから会社に催促してもらえる。

STEP3 離職票がなくても仮手続きができる。退職後12日以上経っても届かない場合、退職証明書や給与明細などを持参してハローワークに相談すると、失業保険の仮手続きを進めてもらえる場合がある。ただし初回の失業認定日までに離職票が必要になるため、並行して入手の手配も続けること。


会社から受け取るもの② 源泉徴収票は退職後1ヶ月以内に届く

源泉徴収票とは何か

1年間に受け取った給与の総額と、天引きされた所得税の金額が記載された書類だ。転職先での年末調整のとき、または自分で確定申告をするときに必要になる。転職先に入社したら原則として提出する書類なので、必ず手元に持っておく必要がある。

届くまでの期間

退職後1ヶ月以内が法律(所得税法第226条)で定められた発行期限だ。最後の給与明細と同時か、その前後に郵送されてくることが多い。ただし会社によって時期は前後するため、退職前に「いつ頃発送されますか」と確認しておくと安心だ。

届かない場合の対処法

まず会社の人事・経理担当に連絡する。退職後1ヶ月を過ぎても届かないなら早めに動く。「源泉徴収票がまだ届いていないのですが、発行状況を確認させてください」と伝えるだけでいい。

それでも発行されない場合は税務署へ。自分の住民票がある管轄の税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出すると、税務署から会社に税務指導が入る。会社が発行を拒否し続けることは所得税法違反にあたるため、この段階でほとんどのケースで発行される。届出書は国税庁のウェブサイトからダウンロードできる(中途退職者の場合、退職後1ヶ月を過ぎた時点から提出可能)。

考えるカエル

考えるカエル

「次が決まってるから離職票はいらない」と思って受け取らなかった。転職先を数ヶ月で辞めたとき、前職の離職票があれば通算できたのにと後悔した。手元に置いておくだけでいい。もらっておけばよかった。


健康保険の切り替え(退職翌日から14日以内)

退職後の手続きの中で、最も急ぎで動くべきものがこれだ。

会社員として加入していた健康保険は、退職日の翌日に自動的に失効する。3月31日退職なら、4月1日から保険証は使えなくなる。切り替えをしないまま病院に行くと、医療費が全額自己負担(10割)になる。

重要なのは、国民健康保険は自動で切り替わらないということだ。自分で手続きをしなければ、無保険状態になる。

3つの選択肢から選ぶ

退職後の健康保険には3つの選択肢がある。

①国民健康保険に加入する

市区町村の窓口(区役所・市役所)で手続きする。退職翌日から14日以内が期限だ(国民健康保険法第9条)。保険料は前年の収入をもとに計算され、自治体によって異なる。収入が減った場合は保険料が下がるケースが多い。

手続きに必要なもの:マイナンバーカード(または通知カード+身分証明書)、健康保険資格喪失証明書(会社から受け取るもの)。

なお、2025年12月以降は従来の紙の健康保険証が原則廃止され、マイナ保険証が基本になっている。国保加入手続きの際にマイナ保険証の利用登録も合わせて行っておくとスムーズだ。

②任意継続被保険者制度を使う

退職前の会社の健康保険を最長2年間継続できる制度だ。手続きの期限は退職日から20日以内で、この期限を過ぎると一切認められない。

保険料は在職中の約2倍になる(会社負担分がなくなるため)。ただし、扶養家族がいる場合は家族分の保険料が不要なため、国保より安くなるケースがある。自分の状況に合わせて保険料を比較してから選ぶといい。

③家族の扶養に入る

配偶者や親など、家族が加入している健康保険の扶養に入る方法。自分の保険料負担はゼロになる。ただし、自分の年収が130万円未満であることが条件(2025年現在)。手続きは家族の勤務先を通じて行う。

期限を過ぎてしまった場合

14日を過ぎても国民健康保険の加入手続き自体はできる。ただし保険料は退職日翌日(資格喪失日)にさかのぼって計算・請求される(最長2年分)。また、届出が遅れた期間の医療費給付は届出日からになる場合があり、遅延期間中の医療費が自己負担になるリスクがある。気づいたらすぐに手続きすることが大事だ。


年金の切り替え(退職翌日から14日以内)

健康保険と同様に、年金の切り替えも退職後すぐに必要だ。

会社員として加入していた厚生年金は退職と同時に資格を失う。退職後は国民年金(第1号被保険者)に切り替える必要がある。

手続きは市区町村の窓口で行う。退職翌日から14日以内が期限。健康保険の切り替えと同じ窓口(区役所・市役所)でまとめて手続きできる自治体が多いため、同じ日に済ませると効率がいい。

持ち物:マイナンバーカード(または通知カード+身分証)、退職日がわかる書類(離職票、健康保険資格喪失証明書など)。

保険料が払えない場合は免除申請を使う

退職後は収入が減るため、国民年金保険料(月額約16,980円・2025年度)の支払いが厳しい場合がある。そのときは保険料免除・猶予制度を使える。

特に失業(退職)を理由とする場合、「特例免除」として審査が通りやすくなっている。離職票や雇用保険受給資格者証を持参して市区町村の窓口で申請する。審査が通れば保険料の支払いが全額または一部免除される。

重要なのは、免除期間中も年金の受給資格には影響しない点だ。「払えないから放置する」と未納になり受給資格を失うリスクが生まれる。払えない状況なら必ず免除申請をしてほしい。


失業保険の申請(ハローワーク)

仕事を辞めた後、次の仕事が決まるまでの生活を支える給付金が失業保険(雇用保険の基本手当)だ。離職票が手元に届いたら、できるだけ早くハローワークで手続きを始める。

退職日の翌日から1年間が受給できる期限(受給期間)なので、申請が遅れるほど受け取れる総額が少なくなるリスクがある。

失業保険の詳しい仕組みや金額の計算方法、自己都合と会社都合の違いについては、別の記事で詳しく説明している。→失業保険の全部を説明する


住民税の支払い

退職後に意外と見落とされがちなのが住民税だ。

会社員のときは毎月の給与から天引きされていたが、退職後は自分で支払う必要がある。退職した翌年の6月頃に、市区町村から納付書が届く。

注意が必要なのは「一括徴収」だ。1月〜5月の間に退職した場合、残りの住民税(その年の分)が最後の給与から一括で天引きされることがある。退職月によっては最後の給与が大きくマイナスになることがあるため、事前に把握しておいてほしい。6月〜12月退職の場合は、残りの住民税は自分で納付書を使って支払う形になる。

退職後しばらくは収入がなくても、前年の収入に基づいて住民税の請求が来る。特に収入が高かった年の翌年に退職した場合、住民税の金額が大きくなることがある。資金的な余裕を持っておくことが大切だ。


確定申告(翌年の2月〜3月)

退職した年の年末に新しい職場に在籍していれば、転職先で年末調整をしてもらえる。その場合は確定申告が不要なことが多い。

以下のいずれかに当てはまる場合は、自分で確定申告が必要になる。

  • 年内に再就職しなかった場合
  • 転職先に源泉徴収票を提出する前に年末調整が終わってしまった場合
  • 年間の給与収入が2,000万円を超える場合

確定申告の期間は毎年2月16日〜3月15日だ。前職の源泉徴収票が必要になるため、大切に保管しておく。

確定申告をしないと、払いすぎた所得税が戻ってこない(還付を受けられない)場合がある。退職した年は源泉徴収で多めに税金を取られているケースが多いため、確定申告することで還付が受けられることが多い。


転職先がすぐに決まっている場合

退職日の翌日に新しい職場に入社する場合、健康保険・年金・失業保険の手続きは転職先の会社がやってくれる。自分でやることはほぼない。

転職先に入社時に提出が必要な書類をまとめておく。

書類いつ提出するか
源泉徴収票入社後の年末調整時
雇用保険被保険者証入社時
年金手帳(基礎年金番号通知書)入社時
マイナンバーカード(または通知カード)入社時

なお、退職と入社の間に1日でも空白期間がある場合(例:3月31日退職、4月5日入社)は、その期間だけ国民健康保険・国民年金への切り替えが必要になる。たった数日でも手続きをしないと、その間に医療機関を受診した場合に全額自己負担になるリスクがある。


会社への返却物も確認する

最終出社日に返すものも確認しておく。忘れると後からトラブルになることがある。

  • マイナ保険証(資格確認書が交付されている場合は返却が必要)
  • 社員証・IDカード・社章
  • セキュリティカード・鍵
  • 会社支給のPC・スマートフォン・タブレット
  • 制服・ユニフォーム
  • 名刺(自分の名刺も、業務で得た名刺も原則返却)
  • 社印・鍵などの備品

※2025年12月以降、従来の紙の健康保険証は原則廃止されているため、退職時の返却は基本的に不要。ただし、資格確認書が交付されている場合は返却が必要になる。

考えるカエル

考えるカエル

健康保険の切り替えを後回しにして1週間後に病院に行ったら、全額自己負担になって焦った。後から還付手続きはできたけど、面倒だった。退職翌日から動ける手続きだと思っておいてほしい。


もう関係ない人だ。事務作業として淡々とやろう

退職後の手続きは、正直なところ面倒だ。しんどい思いをして辞めた会社に連絡を取らなければならないこともある。できれば二度と関わりたくないと思っている人もいるだろう。

でも、割り切ってほしい。

もうあの会社との関係は終わった。残っているのは「書類のやりとり」だけだ。感情を持ち込まなくていい。必要な書類を受け取り、必要な手続きをして、それで終わりだ。

離職票も、源泉徴収票も、あなたが在職中に支払ってきた保険料や税金の結果として受け取る権利がある書類だ。遠慮する必要はない。事務的に、淡々と動く。心のエネルギーは、次のことに取っておこう。

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