障害年金は、心の病でももらえる。「自分には関係ない」と思っている人へ。

知らないと損する制度・お金の知識 公的制度の紹介

傷病手当金の記事を書いたとき、一つだけ書ききれなかったことがある。

傷病手当金は、心強い制度だ。でも、弱点がある。最長で1年6か月しか受け取れない。

うつや適応障害で休職して、療養して。それでも回復に時間がかかって、1年6か月が見えてきたとき。「このあと、どうやって生きていけばいいんだ」と、多くの人が次の崖の前で立ちすくむ。

その崖の手前に、もう一つ、知っておいてほしい制度がある。障害年金だ。

「障害年金? 自分には関係ない」——そう思った人ほど、この記事を読んでほしい。障害年金は、手や足の不自由な人だけのものじゃない。うつ病、双極性障害、統合失調症、発達障害といった心の病でも、受け取れる可能性がある制度なのだ。

考えるカエル

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私も長いあいだ「障害年金=身体障害の人の制度」だと思い込んでいた。でも実際は、精神の病で受け取っている人がたくさんいる。知らないだけで、選択肢を一つ失っているのはもったいない。

障害年金って、何? ── まず大枠を整理する

障害年金は、病気やケガで生活や仕事に支障が出たときに、現役世代でも受け取れる公的年金だ。「年金」というと65歳からのものを想像するけれど、障害年金は年齢に関係なく、条件を満たせば20歳以降いつでも対象になりうる。

そして大事なのが、障害年金は2階建てになっていること。初診日(後で説明する)に、どの年金に入っていたかで、もらえる種類が変わる。

  • 障害基礎年金:国民年金の加入者(自営業・フリーランス・専業主婦/主夫・無職・学生など)が対象。等級は1級・2級。
  • 障害厚生年金:会社員・公務員など厚生年金の加入者が対象。等級は1級・2級・3級。基礎年金に上乗せされる形で、より手厚い。

会社員として働いているときに不調の初診を受けていれば、障害厚生年金の対象になる。これは「働いていた人ほど手厚い」設計になっている、ということだ。制度の詳細は日本年金機構の障害年金のページでも確認できる。

「心の病でももらえる」って、本当?

本当だ。障害年金の対象になる主な精神疾患は、こういうものだ。

  • うつ病・双極性障害(躁うつ病)
  • 統合失調症
  • 発達障害(ASD・ADHDなど)
  • 知的障害
  • 高次脳機能障害 など

ただし、注意点もある。いわゆる「神経症」(不安障害・パニック障害・適応障害など)は、原則として対象外とされている。ただし、その症状がうつ病などと同じくらいの状態である場合には、対象として扱われることもある。ここは自己判断が難しいところなので、後で書く「専門家への相談」が効いてくる。

考えるカエル

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「適応障害だから無理だ」と早合点しないでほしい。病名だけで決まるわけじゃなく、実際の状態で判断される。気になるなら、まず確認だけでもしてみる価値がある。

いくらもらえるの?(令和8年度・2026年度の金額)

ここが一番気になるところだと思う。2026年度(令和8年度)の金額で見ていく。年金額は毎年改定されるので、これは「今の目安」として読んでほしい。

障害基礎年金(国民年金)

等級 年額 月額(目安)
1級 1,059,125円 約88,260円
2級 847,300円 約70,608円

障害厚生年金(厚生年金・上乗せ分)

  • 1級・2級:上の基礎年金に加えて、報酬比例分(給料と加入期間で決まる)が上乗せされる
  • 3級:基礎年金がなく報酬比例分のみだが、最低保障額として年額 635,500円(月額 約52,958円)が用意されている

家族がいる場合の加算

  • 子の加算(18歳到達年度末まで):1〜2人目は各 年243,800円、3人目以降は各 年81,300円
  • 配偶者加給年金(障害厚生1・2級):年 243,800円

さらに「年金生活者支援給付金」も

所得が一定以下の場合、障害年金に上乗せして受け取れる。1級は月7,025円、2級は月5,620円(2026年度)。これは別途手続きが必要だ。

たとえば、会社員時代にうつの初診があり障害厚生年金2級と認定されれば、「基礎年金2級(約847,300円)+報酬比例分」が毎年受け取れる計算になる。これが回復までの長い時間を支えてくれる。

考えるカエル

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金額を見て「思ったよりちゃんとある」と感じた人も多いんじゃないだろうか。傷病手当金が切れた後の“次の崖”を越えるための、現実的な支えになりうる金額だ。

もらうための「3つの条件」

障害年金は、次の3つをすべて満たすと受け取れる。ここが少し複雑なので、ひとつずつ。

条件①:初診日がはっきりしていること

初診日とは、その病気で「初めて医師の診察を受けた日」のこと。障害年金では、この初診日が何よりも重要になる。

精神疾患の場合、ポイントが2つある。

  • 確定診断の日でなくていい。たとえば最初は「なんとなく不調」で内科や心療内科にかかり、後からうつ病と診断された場合、最初に受診した日が初診日になりうる。
  • 病名が途中で変わっても、一連の流れとして見てもらえることがある(例:適応障害→うつ病)。

この初診日に、どの年金に入っていたかで、基礎年金か厚生年金かが決まる。だから初診日の証明(受診状況等証明書)がとても大切になる。

条件②:保険料をちゃんと納めていること(納付要件)

初診日の前日の時点で、年金保険料を一定以上納めている(または免除手続きをしている)必要がある。ざっくり言うと、次のどちらかを満たせばいい。

  • 加入期間の3分の2以上を納付または免除している
  • または、直近1年間に未納がない(特例)

ここで大事なのは、収入がなくて払えなかった期間も、きちんと「免除・猶予」の手続きをしていれば未納にならないということ。「払えないから」と放置せず、市区町村で免除申請をしておくことが、将来の自分を守る。

条件③:障害の状態が、等級に当てはまること

初診日から原則1年6か月経った日(障害認定日)の状態で、障害等級に当てはまるかを判断する。傷病手当金の期限とちょうど重なるのは、偶然じゃない。

等級の目安 ──「働いていたらダメ」ではない

精神の障害の等級は、おおまかにこういう目安だ。

等級 状態の目安
1級 ほとんど自分の身の回りのことができず、常に介助が必要な状態
2級 日常生活が極めて困難で、労働で収入を得るのが難しい状態
3級(厚生年金のみ) 労働に著しい制限がある状態(フルタイムは難しく短時間勤務に限られる、など)

審査では「日常生活能力」を複数の項目で評価する精神の障害に係る等級判定ガイドラインが使われ、診断書全体で総合的に判断される。

ここで一つ、よくある誤解を解いておきたい。「働いていたら絶対もらえない」わけではない。特に3級や、就労支援を受けながらの働き方の場合、働いていることだけを理由に一律で却下されるわけではない。実際の生活のしづらさが見られる。だから「少し働けているから」と最初からあきらめないでほしい。

考えるカエル

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「働けている=元気」ではない。無理して働いて消耗している人ほど、その大変さがちゃんと伝わる申請にすることが大切だ。

申請の流れと、必要なもの

申請は、おおむねこういう流れになる。

  1. 年金事務所(または市区町村の窓口)に相談:自分が対象になりそうか、必要書類を確認
  2. 初診日を証明する:受診状況等証明書を、最初にかかった病院に書いてもらう
  3. 診断書を書いてもらう:今かかっている主治医に「精神の障害用」の診断書を依頼
  4. 病歴・就労状況等申立書を書く:これは自分(または家族)が書く書類。発症から今までの経過・生活の困りごとを自分の言葉で書く
  5. 年金請求書とあわせて提出し、審査を待つ

特に④の「病歴・就労状況等申立書」は、自分の状態を伝える数少ない書類だ。調子のいい日を基準に書くと、実態より軽く伝わってしまう。一番しんどいときの状態を具体的に書くことが大切になる。

つまずきやすいポイント

  • 初診日がわからない:昔のことでカルテが残っていない場合もある。それでも、診察券・お薬手帳・領収書などで証明できることがある。あきらめる前に相談を。
  • 認定日には軽かったが、後で悪化した:「事後重症請求」という方法で、悪化した後に申請できる(65歳になる前まで)。
  • 20歳より前に初診がある場合:保険料を納めていなくても、20歳から障害基礎年金の対象になりうる(所得制限あり)。
  • 不支給になっても、あきらめなくていい:審査請求や、状態が変わってからの再申請という道がある。

一人で抱えず、プロに頼っていい

正直に言うと、障害年金の申請は、書類が多くて複雑だ。体調が悪いなかで一人で全部やるのは、かなりきつい。

だから、頼れる先がある。

  • 年金事務所:まずはここで無料相談ができる
  • 障害年金を専門にする社会保険労務士(社労士):申請の代行・サポートをしてくれる(費用はかかるが、複雑なケースでは心強い)
  • 市区町村の障害福祉の窓口

「制度はあるのに、申請のハードルで受け取れない」のが一番もったいない。一人で抱え込まず、プロの手を借りていい。

※ 障害年金の要件・金額・認定基準は、法改正や個人の状況によって変わります。この記事は2026年度時点の一般的な情報です。実際の判断は、必ず日本年金機構(年金事務所)や専門家にご確認ください。

まとめ|「次の崖」の前に、これを知っておいてほしい

傷病手当金は最長1年6か月。その先に不安を抱えている人に、障害年金という選択肢があることを知っておいてほしい。

障害年金は、心の病でも対象になりうる。働いていても、可能性はゼロじゃない。お金がなくて保険料を払えなかった時期も、免除手続きをしていれば道は残る。

「自分には関係ない」と思って調べないままでいるのが、一番もったいない。まずは年金事務所に「自分は対象になりますか」と聞いてみる。その一歩が、療養に専念できる時間を生むことがある。

考えるカエル

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お金の心配が少し減るだけで、「治すこと」だけに集中できる。制度は、そのためにある。使えるものは、遠慮なく使っていい。

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つらいときは一人で抱え込まないでください

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